Signature Bank倒閉後の元メンバーが新たに「N3XT銀行」を設立、ブロックチェーン基盤・24時間365日対応のプログラマブル決済を主力に

Signature Bankの元メンバーがワイオミング州のSPDIライセンスの下、全額準備銀行N3XTを設立し、ブロックチェーンと組み合わせて24/7のプログラマブル決済を実現。取り付けリスクの排除と、暗号資産フレンドリーなインフラへの市場の需要に応えることを目指している。（前提解説：危機再来？ニューヨーク・コミュニティ銀行の株価が40%急落、破綻したSignature Bankを引き継いだものの一年で自らも危機に） （背景補足：米FDICが方針転換！Signature Bankの買い手に「暗号資産事業の放棄」を要求したとの報道を否定）

ウォール街には本日、懐かしい名前が再び登場。Signature Bank創業者のScott Shay氏と元COOのJeffrey Wallis氏が、ワイオミング州でSPDIライセンスを取得した新銀行N3XTの正式稼働を発表した。2年前、シリコンバレー銀行とSignature Bankの連続破綻は預金パニックを引き起こしたが、今度は「貸出なし・取り付けリスクゼロ・24/7取引」という新たなモデルで復活。テクノロジーで銀行システムの流動性課題に挑む。

全額準備銀行の設計で取り付け回避 N3XTのバランスシートは「預金」と同額の現金または超短期米国債の2項目のみ。ワイオミング州SPDI法に基づき「全額準備型」あるいは「ナローバンク」に分類され、貸出業務は一切行わない。従来の銀行は部分準備金制度のもと、預金を長期投資に回しているが、金利変動や信認喪失の際には資産負債のミスマッチで取り付け騒ぎに発展する恐れがある。Wallis氏は、N3XTは1:1の準備金体制で信認問題を「構造に書き込んだ」と述べ、シンプルな会計方式で流動性リスクを排除するという。

ブロックチェーンがもたらす24/7プログラマブル決済 全額準備が盾なら、ブロックチェーンは剣。N3XTはプライベートパーミッションドチェーンを採用し、資金移動はSWIFTやFedwireの営業時間制限を突破し、真の24時間365日化。法人顧客はスマートコントラクトで複数条件を設定できる。たとえば貨物船が港に到着しGPSシグナルがブロックチェーンイベントを署名すると、資金が即座にサプライヤーに自動送金される。従来は人手での照合作業や「銀行開店待ち」が必要だったが、これをコード化し即時実行することで、物流・為替・暗号事業者の運営コストを直接削減できる。

政治・規制環境の変化 N3XTがトランプ政権第1期末に登場したのは、規制ムードの微妙な変化を反映している。シードラウンド投資家にはParadigmやWinklevoss Capitalが名を連ねており、資本市場は準拠かつ暗号資産フレンドリーな金融インフラを求めていることが窺える。Hack VC共同創業者のAlexander Pack氏はX（旧Twitter）でSignature Bank破綻時を振り返り、「Signatureは暗号業界を支えた最高・最大の銀行だった。前政権は政治的動機でそれを閉鎖した。今、新政権のもとでようやく真の市場解決策が戻ってきた」と述べた。

こうした規制ウィンドウのなか、ワイオミング州SPDI構造はN3XTが機関投資家向け顧客に特化しつつ、州法によるイノベーションの余地も確保。連邦と州のレベル間で妥協点を見出した格好となる。

今後の課題と意義 N3XTは現在、B2B取引や高頻度資金調達シナリオに特化し、短期的には最も収益性の高い貸出業務には踏み込まない。観察筋はこの「安全だが融資しない」モデルを「銀行業界のiPhone」に例え、機能は制限されているようで大手商業銀行にリスク管理の再考を迫る可能性があると指摘。N3XTの規模はまだJPモルガンやシティには遠く及ばないが、「全額準備＋スマートコントラクト」フレームワークは、2023年の銀行危機後の市場に新しい道を示している。

シリコンバレーで「ソフトウェアが世界を飲み込む」と語られるが、N3XTはソフトウェアで銀行の根本ロジックを書き換えようとしている。このモデルが成功すれば、将来の預金者が向き合うのは、健全性を推し量る帳簿上の数字ではなく、24時間移動し随時検証できるオンチェーン証明書となる。前回の取り付け騒動を経験したウォール街にとって、これは新たな安心感であり、銀行業の未来像を巡る公開実験でもある。

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